広告などを制作する際にノンデザイナーの依頼者からエクセルで原稿をいただくことがあります。
中にはレイアウトがきっちり決められ色指定までされたものもあり、その通り作るようにと指示をされたらプロがデザインした仕上がりにはならないのですが…。
『その通り』が満足なのか『アドバイスする』が正解なのか、いつも悩ましい思いをします。
デザインはクライアントとデザイナーの共同作業
デザインを発注するのに慣れた依頼者ばかりではありません。エクセルを上手に使う依頼者の中には原稿を作り込むのが楽しくなってしまって、本来の着地点(またはコンセプト)を見失う方もいます。レイアウトに凝り時間をかけてデザインまで考えて…。
原稿は『内容を伝えること』が目的で『デザインを考える』のはデザイナーが担当する作業です。
以前お付き合いのあった企業で、発注の窓口を任されそうになった方が「自分はデザインができないから」という理由でお断わりになったことがありました。それはもしかして…デザインを依頼する事は、自分がデザインをすることだと思っていたということ?
依頼者は『デザインをする』のではなく、出来上がったものは『コンセプトから外れていないか』客観的に判断することに集中します。せっかくデザイン制作を発注したのに、デザイナーを入力オペレーターにしてしまってはもったいない、デザイン料金も無駄になってしまいます。依頼者は発注するまでにコンセプトを考えておいて、テキストデータと使用する画像などを添付してデザイナーに渡せばOKです。
ヒアリングでコンセプトを明確に
インハウスデザイナーとして他業種の中にポツンと混じることも多かったので、横文字や業界用語を使わないようにしてきました。コンセプトという言葉もわかっているようでなんだかむずかしく、身がまえるクライアントもいらっしゃいます。
コンセプトは確かにクライアントの中にあり、訴求したいターゲットも知っているのですが、伝え方がわからなくて
『可愛く』とか『黒で』
など、いきなりピンポイントでビジュアルを指定されることがあります。
「なぜ可愛くしたいのか?」「なぜ黒なのか?」…『なぜ?』の部分がコンセプトです。コンセプトを知ると
『可愛くじゃなくてもいいかも』や『黒じゃない表現もたくさんありますよ』
なことが結構あったりします。
デザイナーは事前に自分なりの基本のコンセプトシートを作成しておいて、クライアントや事業に合わせた質問事項でヒアリングすることをおすすめします。クライアントもひとつずつ答えることでコンセプトが明確になるようです。
まとめ
とても鋭いご指摘をくださりセンスのあるクライアントがあれば、デザイン知識に格差のあるクライアントもあり、ときにコントロールや駆け引きが必要になります。
クライアントの要望にプラスアルファのアドバイスができるようなヒアリングが ”どのようなときでも” できるのが理想的、とはいえ人と人のお付き合いは噛み合わないことがあるのも否めません。
デザイナーでも営業マンのようなコミュニケーション能力と交渉力が必要だとつくづく感じます。