今でもデザイン制作をデザイン事務所や印刷会社に外注(アウトソーシング)することは多いと思いますが、会社の中にデザイナーを雇い入れて、制作を内製化(インハウスまたはインソーシング)する企業がずいぶん増えました。企業内で働くデザイナーはインハウスデザイナーと呼ばれます。
今から17年くらい前(2005年くらい)に初めてインハウスの制作現場で働かせていただきました。スーツ姿の営業マンや事務員、秘書もいたり…。それまで接点を持つことがなかった職種の方が同じ空間にいることは、新鮮な感覚と違和感とが半々であったのを覚えています。
インハウスデザイナーは孤独
インハウスデザイナーとして、いくつかの会社でお世話になりました。中小規模の企業なのでそのほとんどの会社はデザイン部を作るほどでなく、デザイナー枠はひとりであることがめずらしくありませんでした。とりあえずパソコンとAdobeのソフトさえあれば、どこでも作業ができる仕事です。ポツンとひとりだけデザイナーが混じって、同じ社内で同じパソコンを使っての作業は、特殊なソフトを使用するものの、ただの入力作業のように見えていたようです。
他業種の方とも楽しくお付き合いさせていただきましたが、仕事の悩みや作業上の不都合を共有できる同業者が社内にいません。デザインの仕事を理解していただけないときには少し孤独を感じることもありました。
環境のちがい
今ではすっかり慣れてしまいましたが、初めての大きなカルチャーショックはデスク周りの作業環境でした。
デザイン事務所などでは必ずしもオシャレな見た目ではないけれど、作業効率を優先してちょっと贅沢に空間を取られているところが多くあります。インハウスであたえられる環境はデザイナーが馴染んだそれとはかけ離れていることも少なくなく、アウトソーシングの専門業界から初めて移ってこられるデザイナーは、皆さん必ずびっくりされます。実際に業務をおこなうのはデザイナーですから、本来は作業者本人が主体になって環境を作っていくのがベストなのですが。
シンプルで効率よいデスク周りのレイアウトだと気持ちよく仕事ができるのは、デザイナーも事務員も同じです。もし、キャリアのあるデザイナーを採用して、これからデザインの内製化を検討されているなら、作業環境はぜひデザイナーといっしょに作り上げてください。